謝依旻プロ
ゲスト:謝依旻
インタビュアー:竹清勇
書記:藤森稔樹
竹「今日は忙しい中取材を受けてくれてありがとうございます。いま院生にも教えているので、どうしたら謝ちゃんのような棋士になれるのか、聞きたいことがたくさんあります。早速、囲碁を覚えたきっかけを教えてください。」
謝「最初は兄がプロを目指していました。ある日私も碁会所についていって、囲碁の先生と五目並べをして勝ちました。その方は五目並べが強い方でしたので、それを隣でみていた方が両親に囲碁を習わせてはどうかと聞いてくれたようです。五歳の時でした。」
竹「まだ囲碁を知らない子なのに、五目並べから才能を見出す人もすごいね。」
謝「その時父は先生にプロになれますか?とすぐに聞きました。先生は努力次第でなれます、と答えました。私はピアノやバレエなど色々な習い事をしていましたが全てやめて囲碁に集中するようになりました。」
竹「囲碁をはじめるときにプロになれますか?って質問は日本ではまずないよ。やるからにはプロって言うハングリー精神は本当にすごいと思う。」
謝「たしかに父の囲碁に対する教育は厳しかったです。ただ私もすごく負けず嫌いなので、夜中まで詰め碁をしたり・・・。1年後には兄と同じくらいになっていました。ほとんど毎日休みなく囲碁の勉強はしましたね。」
竹「次の質問はプロを目指すきっかけだったのですけど・・・。覚えたきっかけ=プロを目指すだったのですね。
では日本にくることになったきっかけを教えてください。」
謝「リンカイホウ先生は台湾のヒーローなのです。だから父は棋士にさせるなら日本で、と決めていたようです。」
竹「きたのは小学校の時でしたっけ?」
謝「いえ、もう小学校は卒業していました。棋力は6段くらいでしたね。ただ私の場合は学校の勉強には時間を使いませんでした。あくまで囲碁の勉強が生活の中心です。日本にくる為に色々な方に応援していただきましたし、父や後援者の方の為にもたくさん努力をしました。」
竹「台湾と日本では囲碁を勉強する環境としてはどちらが良いですか?」
謝「日本のほうがいいと思います。研究会や対局の相手に恵まれていますから。」
竹「なるほど。環境の違いではなく大切なのは向上心をもって取り組む姿勢なのですね。ただ日本では学校の勉強を省いて専門的なことをやるって習慣がまだないですね・・・。これからはどの専門分野でも世界と戦うことを視野に入れてそういう教育方法も出てきてほしいです。」
謝「ひとつの事に集中するのは良いと思います。集中力が身に付きますので。」
竹「院生をやめた子も一流の大学にほとんどが合格しています。やると決めたことをやりぬく力が付きますよね。謝ちゃんがたくさんタイトルをとっている所だけじゃなく、そういうバックグラウンドもメディアで取り上げてほしいです。日本にきてから二年くらいでプロになりましたよね。プロになってからの生活は変わりましたか?」
謝「変わりました。普及活動もするようになったし、勉強量は減りました。ただこれはチョウ・ウ先生に教えていただいたのですが、常に碁盤を頭に入れておくことが大切だよと。勉強量よりもそういう気持ちで生活していることが大切なのだと思います。」
竹「喫茶店でお茶を飲んでいる時も囲碁のことを考えているのですね・・・。取材とか関係なく、普通に僕も勉強になります(笑)
最後にアマチュアの方におすすめの勉強方法を教えてください。」
謝「自分の弱点と真っすぐ向き合うことだと思います。自分の弱いところと向き合うのは大変なことなのですが、だからこそ対局が終わった後などに上手の方に見てもらい、反省することはすごく大切なことです。
子供の場合でしたら、大会や、詰め碁のテストなどで競いながら学ぶのはいいと思います。台湾では子供囲碁大会は週一回あり、それは私にとっては一番刺激を受けた勉強方法でした。」
竹「自分の弱いところと真剣に向き合うのはプロでも一番の勉強方法ですものね。それにしても子供大会の数はすごい。日本の大会は大きいもので年に2~3回ですね・・・。」
謝「何か景品や賞金など少しでもいいので出してあげると子供にとってはすごく嬉しいので励みになると思います。私もそうでしたから。」
竹「僕がしている教室でも早速取り入れてみたいと思うことがいくつもありました。今日は貴重な話を聞かせていただき本当にありがとう。メディアではまだあまり知られていない、大切なお話がたくさん聞けました。」
謝「私もまだヨセがすごく苦手で、たくさん勉強しなければいけないことがあるので・・・。」