万波佳奈プロ

ゲスト:万波佳奈 四段 聞き手:竹清 勇 カメラ&書記:藤森稔樹


竹「今日は突撃取材と言っておきながら日本棋院 まで足を運んでくださってありがとうございます。」

万「大丈夫だよ、棋院にもちょうど用事があったから。」

竹「そう言って貰えると助かります。今回の企画は囲碁普及を頑張っている方や、イベントの裏舞台などを取材して愛好家の方にもっと囲碁界に親しみを覚えてほしいという企画なんだ。」

万「うん、わかりました。よろしくね。」

竹「ではまず始めに囲碁を始めたきっかけを教えてください」

万「始めは習い事の一つとして父が勧めてくれたの。他にも水泳とかをしていたし。」

竹「お父さん碁は上手だったの?」

万「当時は1級位だったよ、一生の趣味として覚えてほしかったみたい。」

竹「それでも女流タイトルを取るまでに強くなったのはどうしてかな?」

万「大枝先生に師匠になって頂く前はね、5歳の時から岩田子供教室で碁を教えていただいたの、そこで歩ちゃん(現棋士四段)と一緒だったんだ。」

竹「運命のライバル登場?」

万「そう歩ちゃん以外にも同い年くらいで強い子もたくさんいて、そういう環境だったから続けられたのだと思う。」

竹「やっぱり子供教室って重要だね。すぐにみんな仲良くなるし、競い合う(笑)」

万「うん!子供教室は続けるのにも楽しむのにもすごくいいよね」

竹「やっぱり少年少女大会 で優勝をしてプロを目指そうと思ったの?」

万「実はもう小学三年生の時には目指していたよ。親がだけどね(笑)」

竹「佳奈ちゃん自身はそこまででもなかったの?」

万「私は学校の勉強が一番好きだったから。」

竹「それはそれで偉いなあ…。それにしても優勝ってすごい事だよね。女の子は佳奈ちゃんが最後かな?」

万「私の後にも向井千瑛ちゃん(現棋士二段)が優勝しているよ、女の子も強い子が多くなったよね」

竹「そうだね!修行時代のエピソードがあれば教えてください。」

万「師匠の大枝先生がね、「佳奈出かけるぞ~」って突然どこともわからず連れていかれることがあるの。ある時腕を広げるほど大きいパフェを食べさせてもらったことが思い出深いな。」

竹「そんな大きなパフェってあるの(笑)?というか勝負と関係ないような…。」

万「今思うと、私の勝負への緊張をほぐしてくれていたんだと思う。勝ち負けを変に深刻に考えていたからね~。勝負でもたくさんあるよ。連敗したりするといつもどこかに隠れて泣いていたな…。対局時計を押し忘れてまけたりするドジもしてしまったし(汗)」

竹「いつも笑顔の佳奈ちゃんでも陰ではたくさん泣いてきているのだね。その辛い修行を乗り越えてプロになったわけだけど、今だから思う囲碁をしていて良かったことって何かある?」

万「たくさんあるよ!私は本当に囲碁が好きだから好きなことを仕事にできた事がすごく嬉しい。」

竹「女流のトップになって普及でも引っ張りだこの状況なのに、陰でイベント準備を手伝っていたりするでしょ?そういうの本当に尊敬するよ。やっぱり碁が好きだからできるのだね。」

万「私は言われた事をしているだけだよ。吉原さんや竹ちゃんのように積極的な人が私は本当にすごいと思う。」

竹「吉原由香里先生は本当にすごい活躍だね!僕も碁は好きで色々な人に知ってもらいたいと思っているけど二人の活躍は次元が違うよ(汗)」

万「そんな事ないよ、これからも期待してるよ。」

竹「ありがとうございます!話は戻るけど手合に普及にお手伝いで疲れることはないのかな?」

万「私はね、すぐに有頂天になるの。だからタイトルを取っても防衛できない甘い人なんだ。そんな自分に嫌気がさして、せっかく皆様からお仕事のお話をいただいてありがたいのに、ずーっと囲碁の勉強していたいなぁって葛藤するときもあるよ…。それも自分の甘さなのにね(汗)」

竹「いつも笑顔の陰に努力や悩みはたくさんあるんだね。」

万「私の中ではね、表や裏方というのはなくて、囲碁に関わっている時間というのが大切なの。でもね、私達が囲碁をすることで何か世の中の役に立ててるのかなって悩みがあるんだ。竹ちゃんはどう思う?」

竹「囲碁棋士は世界平和に繋がる立派な仕事だと思っているよ、国際的なエンターテイナー(笑)。でも普通は大学まで行って自分に合う道を探す時間があるのに僕らは物心つく前から囲碁だったもんね…。」

万「そうそう、最初から私達は囲碁しか知らないんだよね。だからきっと色々考えちゃうんだね。」

竹「僕もそう思うよ。佳奈ちゃんにとっての囲碁とは何かな?」

万「人生!月並みかもしれないけど本当にそう思う。」

竹「具体的にいうと?」

万「一手一手に今の気持ちってすごくでるよね?そういう所から本当にたくさんの事が学べるの。囲碁を通じてすごく自分の人生が豊かになったと思う。そういう風に日々変わっていくのが人生によく似ていると思うの。」

竹「なるほどね、囲碁は広いからやり直しがきくものね。」

万「深く考えていくと人生という言葉がぴったりくるよね。私にも囲碁はきっとぴたりとあてはまったのかも。」

竹「それでは佳奈ちゃんにとって大切な囲碁を広めるためにはどんな想いや方法考えているか教えてください。」

万「マスコミの方にうまく協力をお願いできれば、大きな宣伝効果になると思うな。将棋はそれがすごく上手いよね。」

竹「うんうん。将棋でアマからプロになった人がよくニュースになっていたけど、囲碁もたくさんのドラマがあったよね。」

万「そうそう。待っているだけじゃなくて私達からもどんどん発信していかなければいけないと思うの。」

竹「たしかにそうだね。佳奈ちゃんは日テレで特集されていた事があったね」

万「私と言うよりは女流棋士はこういう生活で、こういうお仕事だよっていう番組だったんだ。反響もかなりあったよ。」

竹「女流棋士の収入は囲碁界を知らない人が見たら目を丸くするよね(笑)男性でも張名人は二十台前半で億を稼いでいた。不純かもしれないけど窓口が広がるのは良い事だと思うし、もっとニュースにしてほしいな。」

万「そうだね。後は子供に囲碁を教える事!子供のためになら教えてくれるって人沢山いるから大きな動きになると思うの。」

竹「そうだね。子供のためにスペースを使って普及してくれている方はたくさんいるね。」

万「うん、普及に積極的な人もどんどん出てきているしこれからきっと発展していくと思う。」

竹「ではアマが強くなる勉強方法教えてください」

万「囲碁年鑑を一年で一冊並べる事!それと同じくらいの棋力で競い合える方を見つける事かな。」

竹「なるほどちょうど一日一局くらいでちょうど良さそうですね。ライバルは運もありそう(笑)」

万「そうそう!私も歩ちゃんの存在が大きかったと思うから。」

竹「僕はライバルには恵まれなかったから羨ましいよ。それではプライベートの事を聞かせてください」

万「うん、いいよ」

竹「趣味は何かある?」

万「料理!意外に思うかも知れないけど(笑)」

竹「それはちょっと意外かも(笑)」

万「後はマラソンと習字この三つかな」

竹「マラソンって家の近くとか?」

万「アミーゴとかみんなで走るイベントで走っているよ。マラソンは苦しいから充実感みたいのがあって好きだな」

竹「分かる分かる、それはMだね(笑)」

万「そうかも(笑)竹ちゃんもそうなんだ?」

竹「多分ね(笑)」

竹「では休日の過ごし方を教えてください」

万「すごい普通だよ!渋谷とか六本木を散歩したり、映画をみたり」

竹「それは棋士とは思えないほど普通だね。映画はどんなの見るの?」

万「この間バイオハザード見た、気持ち悪かったぁ…好きなのはパイレーツオブカリビアンとか!」

竹「バイオハザードは見る前から気持ち悪いの分かるでしょ(笑)でも意外とアクションがすきなんだね」

万「そうそう魔法とか超人とか出てくるのがすごい好き~(笑)」

竹「なるほどね。じゃあ好きな食べ物を教えて」

万「焦がし味噌ラーメンっていうのにはまってる、後は和食に中華にトマト、イチゴ…」

竹「細かくなってきたね、実はかなり食いしん坊なんだね(笑)」

万「あはは、ばれた(汗)」

竹「棋士になっていなかったら何をしていたか教えてください」

万「キャリアウーマン!両親の影響かも知れないけどバリバリ働いてみたい。後は幼稚園の先生もしてみたいな、子供が大好きだから。」

竹「どっちも似合うね、幼稚園の先生になったらきっと子供たちは喜ぶよ。じゃあ好きな男性のタイプを教えて」

万「やさしくて男らしい人、芸能人ならオダギリジョーとか」

竹「誰それ?日本人?」

万「日本人だよ~(笑)」

竹「帰ったら調べてみるね(汗)じゃあ最後に囲碁界の裏話があれば教えてください」

万「う~んどんな事でもいいの?」

竹「できれば佳奈ちゃんのことで!」

万「じゃあ初恋の話とか?」

竹「それはファンは大喜びだね。お願いします」

万「5歳の時にね、すごい好きな子がいて、私は毎日遊びに行っていたの」

竹「健気だね」

万「そうそう(笑)でも小学一年の秋私が引っ越す事になったの、その時に相手の子が一生懸命縫い合わせて作ってくれたハート型の布のプレゼントがすごく良い思い出!」

竹「それは良い話だね。今はどうしてるのかな?」

万「私がおばさんだから、きっとおじさんだね(笑)」

竹「今日は良い話をたくさんありがとうございました!」

万「こちらこそ!竹ちゃんも頑張ってね。」

竹「佳奈ちゃんもね。これからもよろしく!」