下坂美織プロ

ゲスト・下坂 美織先生

インタビュアー・竹清

書記・藤森


今回の突撃取材はNHK杯囲碁トーナメントでお馴染みの下坂美織プロです。

NHKでの裏話や早稲田大学に入学してから棋士になった経緯などを詳しく聞いていきたいと思います。

また今回は突撃取材はじまって以来の試みで、横浜囲碁サロンのお客様が見ている前で取材させて頂きました。

ファンの方々もその場でたくさんの質問もしてくれました。

竹清「こんにちは。今日はたくさんの方々の前で少し緊張しますが、生の声を聞きたいと言う方が多かったので公開でやらせて頂きました。よろしくお願いします」

下坂「今日は呼んで頂きありがとうございます。よろしくお願いします」

竹「美織ちゃんは記録に残っているかぎりでも小学5年生の時には少年少女大会で全国入賞をしていますね。囲碁をはじめたきっかけは何だったのでしょう?」

下坂「私の父がアマチュア高段者で「娘にも囲碁を教えたい」と言う事で小学2年生の時に姉と一緒に教えてもらいました」

竹「姉妹で始めたんだね。僕のところもそういえばそうでした。小学校の時はお父さんに習ってたの?」

下坂「家族が厳しく教えると子供が反発してしまうので、父からはルールだけでした。その後は近くの子供囲碁教室があったのでそこに通っていました。20人ぐらいの教室だったのですが、全国大会で活躍するような子もいてとても盛んでした」

竹「それは良いところに入れたね。ヒカルの碁以前は子供は少なかったからね」

下坂「そうなんです。常に目標がいたのでとても環境がよかったですね」

竹「囲碁を始めてからはかなり勉強はしてたの?」

下坂 「そうですね。週に三回は囲碁教室に通っていました。ただ全国大会で活躍出来たのは当時の実力からしたら運がよかったと思います」

竹「たまたま全国5位になっちゃった?」

下坂「そうですね」

竹「そんな事あるかな~(笑)」

下坂「実際翌年からまったく勝てなくなって1回戦負け、2回戦負けと言う感じでした」

竹「そうなんだ、ちょっと意外ですね。中学生の全国大会はどうだったの?」

下坂「出場はしていたのですが、中学の時はそこまで情熱を燃やせず、普段も囲碁の勉強をあまりしていない状況でした」

竹「そうなんですね。もうずっとプロを目指しているのかと思っていました」

下坂「プロはあまり意識していなかったです。中学生の時も全国大会には出れたものの、入賞は出来ませんでした」

竹「でも高校では全国高校生大会、優勝2回と準優勝1回と大ブレークしてますね!」

下坂「小中学生の時は男女混合で打っていたのですが、高校では男子の部、女子の部と分かれますのでそれが大きかったような気がします」

竹「そんなこと言って先週ちょうど美織ちゃんと当たって負かされていますからね(笑)高校に入ってから何か特別な勉強したの?」

下坂「函館には木谷先生のところで修行をしていたすごく強いアマチュアの方がいて、その方に個人指導していただきました」

竹「高校からまた本格的に勉強をはじめたのですね。この頃に全国女流アマ選手権で優勝してるよね。高校生にして日本一の女流アマになったわけですよね」

下坂 「そうですね」

竹「これは本当にすごいんですよ。大人の強豪はあたり前ですが元院生なんかも参加する大会ですからね。何年生の時に優勝したんですか?」

下坂 「高校一年生の時です」

竹「勉強の成果でるのはやっ!受験終わってから本格的に勉強しはじめたと言ったのに(笑)」

下坂「すぐ成果でちゃいましたね(笑)」

竹「実際自分でも優勝はビックリしたでしょ?」

下坂「ビックリでしたね!まさか優勝できるとは思ってもいなかったので・・。無欲だったのが良かったのかもしれません。でもこの大会で優勝したことで、プロになりたいなと思いました」

竹「ただこのあとプロ一直線ではないですよね。女流アマで優勝して、高校選手権も2連覇してそこから早稲田大学に入学したんですよね?」

下坂「ね~」

竹「ね~ってご近所さんの話しじゃないんだから・・。プロ棋士になる人は高校にもいかない方が多いですからかなり珍しいですよ。しかも早稲田に入学された訳ですから。大学に入ってからは学校の勉強も大変だったと思いますが大丈夫でしたか?」

下坂「大学に入った時はすでにプロ棋士になりたかったので学業はそこまでやっていませんでした(笑)」

竹「でもしっかりと卒業していますもんね。学校に行きながらプロ試験を受けていたの?」

下坂「じつは高校2年生の時からプロ試験は受けていたのですが、予選落ちしてしまいました。早稲田大学に入って東京に出て来る事が出来たので、夢に1歩近づいた気持ちでした」

しかも早稲田の学生ってすごく強い方が多いんですよ」

竹「ほんと学生の囲碁部ってホントに侮れないんですよ。下手したらプロより勉強してるんじゃないかと思いますからね(笑)」

下坂「そうなんですよね。マニアックな定石とかすごい知ってるんです。」

竹「そうそうやたら研究熱心で仲の良かった早稲田の学生に『竹清さんこの定石どうなるんですか?』聞かれたけどマニアックすぎて知らんわ!って感じだった(笑)」

下坂「それとプロを目指していた子もいましたし。私はいままで同じ学校に囲碁が打てる子がいなかったんです。だからすごく早稲田で囲碁をするのが楽しかったんです」

竹 「一緒に勉強するメンバーって大事ですよね。大学に入ってからのプロ試験はどうでしたか?」

下坂「実は一年生の時に今年で最後にしようと思って受けました。でもその試験では落ちてしまったんですよ。そこで一度プロになるのは諦めました・・」

竹「え~!もったいない!これからじゃないですか!?」

下坂「でも決めていたので・・・」

竹「諦めたらそこで試合終了ですよ!」

下坂「だから大学2年生のときはほとんど囲碁をやらなかったです。大学の大会に出場したくらで。でも結局あきらめきれずに3年生の時に意を決してプロ試験を受けました」

竹「そこで念願のプロ試験に合格ですね!大学もしっかり卒業して、プロ棋士になっている方なんて指折りですよ」

ここからはお客様からリクエストされた質問です。

竹「美織ちゃんはNHK杯で聞き手をしているよね。そこを少し聞いてほしいってリクエストがありました」

下坂「NHK杯は、はじめてお会いする大先生も多いので緊張しました」

竹「生徒さんによくチクン先生が面白いって聞きます」

下坂「女流棋士の向井千瑛五段が出場した時に趙先生が解説だったんですよ。そしたらすごい女流棋士への応援がわかりやすいんです。『今日の見所は何ですか?』って聞くと、治勲先生は『168手で向井五段の中押し勝ちです』とか言ってしまうんです(笑)」

竹「それは見所じゃなくて勝敗予想だね。そこは聞き手としてはどんな感じなの?やっぱり困るの?」

下坂「どう反応していいのか悩みますね(笑)」

竹「なんとも言えないよね。そういう時はどうするの?」

下坂 「アハハって言います」

竹 「なるほど、それしかないね(笑)武宮先生とかも話題によく出ますがどうですか?」

下坂「終盤になると形勢が気になるじゃないですか。それで武宮先生に『形勢の方はどうなんですか?』って聞くと『あ~でも地を数えてると下坂さんと雑談できなくなっちゃうからまぁいいよね』って言うんですよ(笑)

竹「それは下坂さんが解説した方がいいね(笑)そう言う時はどうするの?」

下坂「アハハって」

竹「アハハ万能すぎ!(笑)そういう時ってカンペとかもあるの?」

下坂「武宮先生の時は雑談が多くなるので「解説お願いします」ってカンペが出ますよ」

竹「その話しめっちゃ面白いね。もう少し聞きたところだけど、話を変えてNHK杯は検討の様子も流れていますが、収録が終わったあとも検討はやっているんですか?」

下坂「それは人によりますね。終わった後でも1時間ぐらいやる先生もいれば、終わったらすぐに帰る先生もいます。」

竹「サラリーマンみたいだね(笑)また少し違う質問なんですが、気分転換はどんな事をするの?」

下坂「棋士ってずっと座りっぱなしなのでちょっと運動しようかなと思って最近ヨガをはじめました。すごくいいですよ」

竹「へ~!僕もやってみようかなー」

下坂「想像したら何か面白い(笑)」

竹「これも女性からの質問なんですが最近一番ほしい物は?」

下坂「物はぱっとでてこないですね。物って言うよりは旅行には行きたいですね」

竹「おお!どこに行きたいの?」

下坂「実は来月にニューヨークにいくんですよ。」

竹「ニューヨークか。気をつけてね、路地裏とか行くと銃で打ち合ったりしてるから」

下坂「えっ?そうなんですか?」

竹「映画とか見てるといつもそうだよ」

下坂「素直に受け止めすぎです(笑)」

竹「今後の夢とか目標はありますか?」

下坂「女流棋戦でもっと活躍できるようになりたいです。まだリーグ入りもした事がないので、ゆくゆくは挑戦者とかにもなれるように頑張ります!」

竹「囲碁以外では?」

下坂「普通の幸せで(笑)」

竹「普通の幸せ大切だよね。ではアマチュアの皆さんにおすすめする勉強方法があれば教えてくいださい」

下坂「そうですね。棋譜並べが好きな方、詰め碁が好きな方、実戦が好きな方と色々分かれると思うので、自分が『好きだな』『楽しいな』と思う事をやるのが良いと思います。楽しいと思う事なら続きますしそれが一番だと思います。あとはNHK杯を見て頂ければ良いと思います(笑)」

竹「本当にNHK杯は良いよね。僕も囲碁を始めた頃は父がビデオに撮っていたものを寝る前に見ていました。あれで本当に最初強くなったと思う。最後の質問で目標にしている棋士はいますか?」

下坂「そうですね。吉原由香里先生です。普及もしながらタイトルも獲得されているじゃいですか。本当にすごいなと思います。目標というとおこがましいかもしれないですが尊敬していますね」

竹「吉原先生は普及に手合いに本当に頑張っていますね。私達も頑張りましょうね!今日は本当に忙しいなか、横浜囲碁サロンまで来て頂きありがとうございました。これからもは生徒さんと一緒にNHK杯を観戦していこうと思います」

このあとはサロンで下坂先生の実戦譜を解説して頂きました。予定していた時間よりも一時間以上長くなってしまう程質問も多く、下坂先生の人気が伝わってきました。

最後の最後まで笑顔で楽しませてくれて私達も改めて下坂先生のファンになりました。これからの活躍も楽しみにしております!!